Introduction
稲わらの持ち出しや堆肥の入手難、資材価格の高騰により、水田・転作畑の地力(土壌の養分供給力)が年々低下しています。特に大豆の作付け頻度が増えるほど、地力窒素は減少していく傾向があります。この課題に対して、マメ科緑肥「ヘアリーベッチ」を輪作に組み込むことで、減肥・雑草抑制まで狙えることが各地の試験でわかってきました。導入のしくみとポイントをご紹介します。
なぜ今、緑肥による地力づくりが必要なのか
稲わらの持ち出しや堆肥の入手困難、資材価格の高騰により、圃場への有機物投入量は減少傾向にあります。水稲・大豆を中心とした輪作体系では、大豆の作付け頻度が増えるほど、地力窒素(土壌が本来持つ窒素供給力)が減少していくことが分かっています。堆肥に頼れない状況に加え、環境保全型農業への関心の高まりもあり、化学肥料に依存しすぎない土づくりの手段として緑肥が注目されています。
ヘアリーベッチが水田・転作畑に向く理由
①マメ科緑肥の中でもトップクラスの窒素固定力
ヘアリーベッチは、クロタラリアやクリムゾンクローバー、レンゲなど他のマメ科緑肥と比較しても、地上部の窒素含有率が高いことが確認されています。乾物収量に窒素含有率を乗じることで、10aあたりにすき込まれる窒素量を算出できます。
②地下深くまで根を張り、水田汎用化に好適
根が深く(50cm程度)伸長し、硬く締まった水田の土を内側から膨軟化させます。水はけ・通気性の改善につながり、水田を畑作にも使いやすくする「水田汎用化」に適しています。
③アレロパシー効果による雑草抑制
ヘアリーベッチが持つアレロパシー(他感作用)により、水田雑草の発生を抑える効果が各地の試験で確認されています。宮城・栃木・静岡・兵庫の水田試験区では、いずれもヘアリーベッチを栽培した区の方が、無処理区より雑草量が少ない結果となりました。
④研究で報告されている土壌病害への知見
2025年、雪印種苗の研究グループにより、ヘアリーベッチの根から複数の植物病原細菌に対する抗菌活性が確認されたことが、専門誌「牧草と園芸」にて報告されています。同研究では、トマト青枯病・キャベツ黒腐病・カボチャ果実斑点細菌病の発病が抑えられる傾向が確認されたとのことです(出典:小鑓ほか「マメ科緑肥作物「ヘアリーベッチ」による細菌性植物病害抑制技術」牧草と園芸 第73巻第5号、2025年)。あくまで研究段階の知見であり、当店として効果を保証するものではありませんが、緑肥としての土づくり効果に加えて、こうした報告もあることをご紹介します。
減肥のしくみ
ヘアリーベッチの根に共生する根粒菌が空気中の窒素を固定し、すき込むことでその窒素が土壌に還元されます。ポイントはすき込みから入水までのタイミングです。
〇すき込み後、ヘアリーベッチが吸収していた窒素はまずアンモニア態窒素に変わります
〇7〜10日ほどで入水・田植えを行えば、アンモニア態窒素のまま水田に残り、稲の肥料として働きます
〇逆に、すき込みから入水まで2〜3週間以上空いてしまうと、アンモニア態窒素が硝酸態窒素に変化し、畑条件下では2週間程度で土壌中の窒素が半減してしまいます
すき込み量は、生育の中庸な場所を50cm四方で刈り取って重さを量る「坪刈り」で確認できます。生草重2〜4kg/㎡(草丈25〜30cm程度)が一つの目安で、この場合10aあたり8〜16kgの窒素集積量が見込め、その分化学肥料を減らすことができます。
導入のポイント(栽培・播種・排水対策)
【播種方法】
水稲・大豆の収穫時期とヘアリーベッチの播種時期が重なる場合は、収穫前の「立毛間播種」が有効です。水稲では細断された稲わらが、大豆では落葉が覆土代わりになりますが、発芽条件としては良くないため、播種量は通常の1.5倍を目安にします。春播きする場合は、覆土・鎮圧をしっかり行ってください。
【播種量】
3〜5kg/10aが目安です。
【排水対策が成功の分かれ目】
ヘアリーベッチを含むマメ科緑肥は、排水良好な条件を好みます。半湿田または乾田への導入が基本で、湿田では生育が難しくなります。播種前後の排水対策(額縁明渠を水尻に確実につなげる、溝切機・培土機の活用など)を講じるかどうかが、その後の生育を大きく左右します。排水不良により湿害を受けると、地上部が赤くなる「赤ベッチ」という状態になり、根量・根粒数がともに少なくなってしまいます。
当店のオススメ品種
早生タイプと晩生タイプ、それぞれの特性に合わせて2品種をご用意しています。一般地・暖地で大豆の前作として春播きする場合は「ナモイ」、積雪地帯での利用や、越冬させてじっくり有機物量を増やしたい場合は「ウインターベッチ」がおすすめです。
【タキイ種苗】ヘアリーベッチ ナモイ(早生タイプ)
つる性で茎は約200cm、草丈50cm程度に生育。根が深く(深度50cm程度)伸長し、根粒菌が共生します。一般地・暖地で大豆の前作として春播きする場合におすすめです。
【タキイ種苗】ヘアリーベッチ ウインターベッチ(晩生タイプ)
越冬性に優れ、積雪地帯での利用に適した品種です。生育期間が長く有機物量が豊富で、果樹園の下草や水田・大豆の裏作にも向きます。播種期は中間・暖地で3〜4月中旬、9月中旬〜11月上旬、冷涼地で4〜5月上旬、9〜10月中旬が目安です。
まとめ買い・お問い合わせ
1袋ずつの少量対応から業務用のまとめ買いまで幅広く対応しております。転作予定の圃場面積、輪作体系(水稲・大豆・麦のローテーション)を教えていただければ、適した品種・播種時期・数量をご提案いたします。まとめてのご注文・お見積りは、お気軽にお問い合わせください。
