金時草について:石川県の伝統野菜、その魅力と栽培方法
金時草とは?
金時草(きんじそう)は、石川県を代表する伝統野菜の一つです。葉の表は緑色、裏は鮮やかな紫色をしており、この美しいコントラストが特徴です。彩りを加える野菜として非常に高い人気がありますが、その栄養価の高さから健康食材としても重宝されています。
金時草のタネはあるの?
金時草は栄養繁殖のため、タネの取り扱いはありません。挿し木して増殖させた苗を植えつけします。家庭菜園用の苗は主にゴールデンウィーク前後に店頭に並びます。
歴史と文化
金時草は18世紀に中国から渡来し、熊本市の水前寺で栽培されていたことから、和名「スイゼンジナ」がつけられました。熱帯アジアが原産で、キク科ギヌラ属の多年草です。藩政時代に金沢に伝えられ、農学者・村松標左衛門の著書『農業開志』(1775年頃)に、石川県で栽培されていた記録があります。
大正時代には、金沢市花園地区の木びき職人、中田龍次郎氏が県内のどこかから持ち帰り、一株だけ畑に植えたのがきっかけで、その息子、中田義久氏が昭和初期から料理屋向けに栽培を始めました。その後、村の人々も関心を持ち、次第に栽培が広まりました。昭和初期から商品として栽培されるようになり、昭和37年頃から地元金沢市場へ出荷されるようになりました。
栄養と健康効果
金時草はビタミンA、C、鉄分、カルシウムなどの栄養素が豊富です。抗酸化作用があり、免疫力を高める効果が期待できます。また、食物繊維も多く含まれており、腸内環境を整える働きもあります。特に紫色の色素成分であるアントシアニンが豊富で、目の健康や美容効果も期待されています。
栽培方法
金時草の栽培は比較的簡単で、家庭菜園でも楽しむことができます。
- 特徴
葉の表が濃緑色、裏が赤紫色。耐暑性が強く、生育適温は20~28℃。
5℃以下で生育停止、0℃以下で枯死。 - 短日植物
冬季は施設内で最低気温を5~10℃に保温すると開花するが、結実はしない。
土作りと施肥
- 土壌:膨軟な土壌でpH6.0~6.5の肥沃地が適する。露地栽培、温室、パイプハウスでも栽培可能。
- 施肥:堆肥を主体に土づくりを行う。緩効性肥料を使用し、長期間効果を持続させる。
栽培の手順
1. 圃場の準備
- 堆肥と基肥を施し、よく耕す。畝は幅120cm、高さ15cmに整地する。
2. マルチ張り
- 効果:雑草防止、水分・肥料の保持、地温管理、病害虫の発生抑制、泥はね防止。
- 方法:シルバーマルチは地温の上昇抑制効果が高く、アブラムシの忌避効果もある。黒マルチを使用する場合は敷きワラを行う。
3. 定植
- タイミング:風が強くない晴れか曇りの日に行う。植え付け前に苗の根をほぐしてから植える。
- 手順:マルチを張る方法には、植え付け後に張る方法(畝の中央での掛け合わせ)と、植え付け前に張る方法(畝全体を被覆)がある。
収穫と剪定
- 収穫:定植から約40日後に最初の収穫。気温が低く朝露が残る早朝に行う。11月頃まで収穫可能。
- 剪定:主枝が長く伸びたら早めに剪定し、株元の細い枝を全て切り取る。1次側枝、2次側枝を適宜収穫・剪定する。
病害虫防除
- 日頃の観察を怠らず、病害虫の早期発見と初期防除に努める。農薬の使用に際しては最新情報を確認し、適切に使用する。
料理法
金時草は様々な料理に利用できます。以下にいくつかのレシピを紹介します。
おひたし
金時草の葉をさっと茹でて、冷水にさらし、食べやすい大きさに切ります。お好みで醤油やポン酢をかけてお召し上がりください。
天ぷら
金時草の葉をそのまま天ぷらの衣にくぐらせ、カリッと揚げます。塩を少々振ってシンプルに味わうのがオススメです。
サラダ
生のままサラダに加えても美味しくいただけます。オリーブオイルとレモン汁でさっぱりと仕上げると、金時草の風味が引き立ちます。
まとめ
金時草は、その美しい見た目と豊富な栄養価から、石川県を代表する伝統野菜として愛されています。栽培も比較的簡単で、家庭菜園で楽しむことができます。ぜひ、金時草を取り入れた料理で、健康と美味しさを楽しんでみてください。