Introduction
近年、連作などにより発生する病害や環境に対する負荷低減の観点からも緑肥作物に非常に注目が集まっています。
様々な機能性のある緑肥作物を取り上げて、その効果について特集していきたいと思います。
緑肥作物とは何か?
農耕地の土壌を安定させ、高収量・高品質を目指すため、有機物を利用した土づくりが古くから行われてきました。
しかし、堆肥は運搬コストが高く、労力もかかるため使用が減少しています。
高齢化や環境負荷低減に対する視点も加わり、この傾向はさらに加速しています。
一方で、化学肥料の偏重により土壌劣化が問題となり、土づくりの重要性が再認識されています。
化学肥料の価格が高騰する中、緑肥は労力やコストの面で有利な有機物として再評価されています。
緑肥作物は、土壌改良、肥沃度の向上、雑草抑制、土壌浸食の防止など、さまざまな農業的利益を提供します。
緑肥作物の効果
①土壌の物理性の改善
●土壌の団粒化
●水はけ、保水力の改善
②土壌の生物性の向上
●土壌微生物の多様化
●土壌病害、センチュウの抑制効果
●菌根菌の増加
③土壌の化学性の向上
●肥料成分の保持力増大
●クリーニングクロップ
●窒素固定
④環境保全
●雑草抑制
●景観美化
●養蜂資源
●防砂、土壌流亡対策
●防風、農薬飛散防止
●バンカープランツ
- れんげ(タキイ種苗様提供画像)
- ウィンターベッチ(タキイ種苗様提供画像)
緑肥作物の選び方
選び方のポイントは大きく2つあります。
①タネをまく、あるいはすき込みするタイミングはいつか?
②緑肥を導入する目的は何か?
この2点で選ぶと良いと思います。
緑肥作物の使い方
【一般的な栽培方法】
①播種
種を均等にまくことが重要です。
②生育管理
適切な水やりと雑草管理を行います。
③すき込み(鋤き込み)
生育が進んだ段階で、緑肥作物を土にすき込みます。
【すき込み時期と方法】
すき込みのタイミングは重要で、最適な時期を逃すと効果が減少することがあります。
一般的に、開花期前後が最適とされています。
すき込み方法は、トラクターやすき込み機を使用し、緑肥作物を土中に深く混ぜ込むようにします。
【腐熟期間】
すき込んだ後、緑肥が完全に分解されるまでには一定の期間が必要です。
この期間は作物や気候条件によって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月です。
【主作物の減肥栽培方法】
緑肥を使用することで、次に栽培する主作物の肥料使用量を減らすことができます。
具体的には、緑肥から供給される栄養素を考慮し、化学肥料の使用量を調整します。
秋まきの代表的な緑肥作物
『ヘアリーベッチ』
●地力回復・向上が期待できるマメ科緑肥作物
●水はけの良い土壌を好む
●根粒菌によって空中窒素を土壌に固定し、地力増進や土壌改善等の効果を発揮する
●アレロパシー効果による1年生雑草抑制が期待できる
●藤色の花が咲き、景観美化や蜜源植物として利用できる
『れんげ』
●根粒菌が空中窒素を固定し、土壌を肥沃化する。後作物の減肥に役立つ。
●春にピンク色の花が咲き、景観緑肥として楽しめる。
●乾燥良好な肥沃土壌を好む
『ライ麦』
●壌の構造を改善し、土壌浸食を防ぐ
●密生するため雑草の抑制にも役立つ
●根が深く伸び、土壌の通気性を改善
『エン麦』
●速く成長し、大量のバイオマスを生産
●土壌の有機物含量が増加し、土壌の肥沃度が向上
●雑草の発生も抑制
『クローバー』
●窒素固定による土壌肥沃化
●低く密に茂るため、雑草を抑制
●根が深く張るため、土壌の構造改善や浸食防止にも効果的
『こぶ減り大根』
●おとり効果で根こぶ菌を減らす
●初期生育が良好で、早期におとり効果が得られる
●おとり用途で利用後、土壌中にすき込むことも圃場から持ち出すことも可能
●根が肥大しないタイプの大根ですき込みやすく、雑菌の繁殖が軽減できる
『緑肥用からしな 黄花のチカラ』
●生物燻蒸作物としても注目
●黄色の花を一面に咲かせ、景観緑肥として適する
●初期生育が早く、短期間で高収量が得られる