固定種とF1種の違い
◎「固定種(こていしゅ)」とは?
固定種は、親植物と同じ形質を持つ子植物が育つ品種です。長い年月をかけて選抜され、特定の特性を持つように安定化されています。
固定種は代々安定した形質を維持し、自家採種(自分で種を取って次の年にまた植えること)が可能です。
◎「F1種(エフワンしゅ)」とは?
異なる形質を持つ親植物同士を交配して作られる品種です。
商業農業において高収量や病害虫耐性を求める場合に適しており、自家採種ができないため毎年新しい種を購入する必要があります。
それぞれの特徴
◎「固定種」の特徴
(1)自家採種の可能性
固定種の大きな利点は、自家採種ができることです。自分で種を取り、翌年以降も同じ品種を育てることができます。
(2)遺伝的多様性
固定種は遺伝的多様性が高く、何世代にもわたって自然環境や栽培者による選抜を経てきており多様な遺伝子が内包されています。
また形質や特性はある一定程度固定されていますが、多様性を内包しているがために揃い性がF1種よりも大きく劣ります。
(3)味や風味の豊かさ
固定種は、味や風味が豊かで独特であることが多く、地域の伝統的な料理に適しています。
これは固定種が地域の気候や土壌に適応し、その土地に根づいてきた結果です。
(4)文化的・歴史的価値
固定種は地域の文化や歴史と深く結びついています。
多くの固定種は古くからその地域で栽培され、伝統的な食文化の一部となっています。
◎「F1種」の特徴
(1)雑種強勢(ハイブリッド・ビガー)
F1種は、雑種強勢により生育が旺盛なため、不良環境下においても栽培が安定します。
また、親系統(原種)に付与した優良形質を兼ね備えることができます。
これにより、農作物の生産性が向上します。
(2)形質の揃い
両親の形質が固定化されているので、品種特性が均一に発揮されます。
(3)一代限りの特性
F1種の種から育てた植物の種を次世代に撒いても、親と同じ形質が再現されません。
これは、次世代の植物(F2世代)が非常に不揃いで、親とは異なる形質を持つためです。
(4)育種による病害虫や環境への抵抗力
多くのF1種は病害虫に強い特性を持つように育種されています。
これにより、農薬の使用量を減らすことができる利点があります。
固定種とF1種の使い分け
◎家庭菜園向きの固定種
固定種は揃い性や耐候性・耐病性ではF1種に大きく劣るので営利生産者はあまり作付けをしていません。
市場流通が少ない品種が多いため、家庭菜園で栽培するというメリットがあります。
自産自消で伝統的な食文化にも触れられます。
また、自家採種ができるのも家庭菜園に向いている一つの要因です。
◎商業農業向きのF1種
高収量で揃いが良く、病害虫に強く育種されているため、大規模農業に向いています。
近年の気候変動にも対応できるよう常に品種改良されており、均一で高い品質の青果が栽培できるという大きなメリットがあります。
ただし、その画一性から地域の食文化の衰退につながっているという側面もあります。
- 家庭菜園
- 大規模農業